さまざまな身体の変化を体感する妊娠・出産、そして産後。我が子が生まれた喜びも束の間、授乳期ののちに通常モードに戻ろうとすることによる身体の変化に、戸惑う女性も多いはず。そんな産後ママが抱える悩みのなかでも特に多いのが産後の抜け毛。今回は髪の毛の仕組みから抜け毛の原因、対策まで詳しくご紹介します。
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産後の抜け毛が起こる原因
日々生え変わる髪の毛ですが、なぜ産後に抜け毛が目立つのでしょうか。まずは毛髪の仕組みを知り、産後の抜け毛の原因について考えてみましょう。
ヘアサイクル(毛周期)の仕組み
髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、「成長期」「退行期」「休止期」という3つの期間を繰り返すことで髪の毛は生え変わっていきます。
- 成長期…髪の毛が伸びる期間
- 退行期…髪の毛の成長がゆるやかになり、抜けやすくなる期間
- 休止期…髪の毛の成長が止まり、抜ける期間
ヘアサイクル(毛周期)は男女差があり、男性で2〜5年、女性で4〜6年ほど。また、1日に抜ける髪の毛の本数は、50〜100本といわれており、季節などによっても変化します。とくに春・秋という季節の変わり目は抜け毛が増加。気温などの外的変化はもちろん、それに伴う生活環境の変化などの影響も受けます。では産後については、どのような影響を受けているのでしょうか。
原因1:妊娠による女性ホルモンの変化
「産後脱毛症」「分娩後脱毛症」などともよばれる産後の脱毛。その発生には、身体のあらゆる機能の調節しているホルモンが影響しています。女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、妊娠・出産で分泌量が急激に変化。抜け毛や気持ちの浮き沈みなど、産後の悩みに深く結び付いています。
- エストロゲン…女性らしさをつくるホルモンで、排卵前に多く分泌される
- プロゲステロン…妊娠維持に関わるホルモンで、排卵後に多く分泌される
女性の体はエストロゲン・プロゲステロンの分泌量の変化により、約28日周期で排卵〜生理を繰り返します。それが妊娠すると、通常の50〜1000倍といわれるほどに増加。しかし、出産を終えると急激に減少し、ほぼゼロの状態に。少しずつ分泌が戻りはじめるものの、通常のバランスに戻るのには、人により3か月〜1年ほど要します。エストロゲンには頭髪や肌を美しく保つ効果があり、妊娠時その分泌が増えることで、髪の毛が「退行期」に移行せず「成長期」の状態をキープ。しかし産後、エストロゲンが限りなくゼロになることで、髪の毛は一気に「退行期」となり、抜けやすい状態に。これが、髪の毛が一気に抜けたように感じる原因です。
原因2:産後のストレス
このようにホルモンバランスの急激な変化が起きる妊娠〜産後ですが、そこから子育てがスタート。母乳やミルクをあげたり、おむつを替えたり、寝かせたりと、1日中つきっきり。ホルモンバランスがこれまでと異なるうえに、慣れない育児や生活の変化によって、睡眠時間が足りない、食事が満足に摂れないなど、身体に負担がかかるだけでなく、心も不安定に。この産後のストレスによって、抜け毛が起きやすくなってしまいます。
原因3:授乳による母体の栄養不足
出産後、母乳を与えているママはとくに栄養不足になりがちです。普段食べものは胃腸で消化・吸収・分解され、血液として全身に運ばれます。この血液が母乳のもと。乳腺組織に取り込まれ、母乳がつくられます。授乳期は数時間おきに1日何度も授乳をしますから、これにより鉄や亜鉛・タンパク質などの栄養や水分が体外へ。ママにとって充分な栄養を確保することができず、抜け毛が増えてしまう要因となります。
原因4:無理なダイエット
妊娠前の体型に戻そうと、産後すぐにダイエットを開始するのも、抜け毛が発生しやすくなる原因のひとつです。そもそも妊娠して太りやすくなるのは、ママと赤ちゃんのため。妊娠中、女性の身体は胎児を守ろうと皮下脂肪をつけ、出産の出血や産後の母乳のためにエネルギーを蓄えます。そして産後、ママの栄養は優先的に母乳へ。そんなタイミングで食事制限や過度な運動など、無理なダイエットをしたらどうでしょう。栄養不足・カロリー不足状態で、髪の毛や頭皮・肌にも影響が出てしまいます。産後も赤ちゃん優先の身体の仕組だということをきちんと知ることが大切です。
産後の抜け毛はいつまで続く?
産後の抜け毛は女性ホルモンバランスとヘアサイクル(毛周期)が密接に関係しています。そのため、産後2〜3か月目あたりから抜け毛が気になりはじめ、4〜6か月頃ピークに。そこからホルモンバランス・ヘアサイクル(毛周期)が戻りはじめ、産後6か月〜1年ほどで抜け毛が落ち着いてきたと感じるママが多いようです。産後多くの女性が体験するごく自然な変化だということ、バランスが整えばきちん戻ってくること、そして、抜ける毛の量や発生するタイミングなどには個人差があること。このあたりをきちんと理解していれば、過度に心配しなくて済みますね。
産後の抜け毛を軽減するために取り組みたいこと
産後の自然な現象であることは分かったものの、見た目が気になってしまったり、不安な気持ちが加速してしまったりしますよね。ここからは、できるだけ抜け毛を防ぐためのポイントについてお伝えします。
睡眠の質を上げる
子育て中のママにとって、充分な睡眠時間を確保することはなかなかハードルが高いもの。極力睡眠時間を確保したいところではありますが、難しいときは睡眠の質を上げる工夫をしてみましょう。就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控えたり、ダウンライトや暖色系のライトに切り替えたりすることで、身体が短時間でも休まりやすくなります。また、里帰りや産後院など、家族やプロの力を借りるのも手。お子さん中心の生活になるのはもちろんですが、出産という大仕事を終えたママのケアも同じく重要。できるだけリラックスできる時間やタイミングを持てるよう心がけてくださいね。
栄養バランスの取れた食事を摂る
出産で体力やエネルギーを消費したうえ、ママの栄養は母乳へ優先されますので、産後はこれまで以上に栄養価にこだわりたいところ。鉄分・カルシウム・ビタミンC・タンパク質・亜鉛など、栄養バランスのよい食事を、少しずつでもいいので取り入れていきましょう。抜け毛という視点では、とくにタンパク質の摂取が大切。タンパク質は髪の毛のもととなる栄養素ですので、鶏肉や赤身肉・白身魚・納豆などの大豆製品を積極的に食べるのがおすすめです。逆に、脂っこい食事や糖質の多い食品などは母乳に影響が出ることも。できるだけ避けましょう。
頭皮にやさしいシャンプーに変える
シャンプーなど、産前に使用していたケア用品が肌に合わなくなったというママの声も聞かれます。これも女性ホルモンバランスの影響。洗浄力の強いシャンプーなどは頭皮を刺激しすぎる可能性もありますので、もし肌質の違いを感じた場合は、低刺激で洗浄力の強すぎないものに変更してみては。肌にやさしいアミノ酸系シャンプーなど、今では商品も幅広く売られています。ヘアサロンに行ける場合は、美容師に相談してみるのもよいでしょう。手入れがラクな短めの髪型にしてみるのも、ひとつの手です。また、子育ての疲れや慣れない緊張などで頭皮が凝っている場合も。固くなった頭皮をほどよい力でマッサージして血行を改善するのも、頭皮環境を整えることにつながります。
産後の抜け毛は美容皮膚科でもご相談いただけます
いかがでしたでしょうか。産後の抜け毛は多くのママが経験する、身体にとって自然な変化。まったく気にしないということは難しいですが、先輩ママや経験者に相談するなど、できるだけひとりで悩みすぎないよう心がけたいですね。赤ちゃんも大切ですが、赤ちゃんにとっても、ママは欠かせない大切な存在。自分だけが無理する必要はありません。家族や友人など、周りに協力してもらえる場合は、とことん甘えてみてもいいのではないでしょうか。もし、産後の抜け毛でつらくなったり、あまりにも抜け毛がひどいと感じたりした場合は、美容皮膚科に相談するのもいいでしょう。産後の抜け毛だけでなく、加齢やストレスなどによる脱毛・薄毛で悩む女性も少なくありません。専門家のアドバイスや治療によって症状が改善し、心がすっと軽くなることがあるはずです。
「CZEN CLINIC(シゼンクリニック)池袋院」では、“肌と髪のエイジングケア”をコンセプトに美髪のための点滴メニューなどを取り揃えています。また、「CZEN CLINIC(シゼンクリニック)鎌倉院」では、不足している栄養を知るための「栄養解析」をご用意。もちろん、医師本人がカウンセリングし、悩みや状態を確認したうえで、必要な治療やケア方法をご提案。抜け毛に関して、施術は産後一定期間置く必要がありますが、相談はいつでも可能。「施術を受けるか迷っている」方も、即日治療ではなく、検討したうえで決めていただけるのでご安心ください。カウンセリングは電話・ネット・LINEからでも予約できます。「CZEN CLINIC(シゼンクリニック)」の医師カウンセリング、まずはお気軽にご相談ください。
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CZEN CLINIC 鎌倉院 院長
野﨑 由生(のざき ゆう)
「CZEN CLINIC(シゼンクリニック)」鎌倉院院長。日本皮膚科学会 日本専門医機構認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会 日本抗加齢医学会専門医。これまで、皮膚科専門医として大学病院やがんセンターに勤務。シミや肝斑など患者の気になる部位のみにフォーカスするのではなく、皮膚全体・からだ全体の健康を意識した治療や診療を心がける。