ほうれい線は、頬と口周りという性質の異なる2つの領域の境界にできる、構造的な「凹み」です。
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ほうれい線は、なぜ「シワ」ではなく「境界線」なのか
顔の内部には、皮下組織を区画ごとに支える「支持靭帯」と呼ばれる線維の膜があります。
ほうれい線のあたりには、頬骨から皮膚を支える靭帯(頬骨皮膚靭帯)が存在し、この靭帯を境に、上側(頬)と下側(口周り)で、皮膚の動き方や脂肪のつき方が異なります。
加齢によって頬の脂肪が下方向にボリュームを失っていくと、この境界線がより明確な溝として際立って見えるようになります。
つまり、ほうれい線という溝は、「そこにシワがある」のではなく、「頬側と口側の支持構造の違いが、境界として見えている」状態です。
この理解が、対処法を考えるうえでの出発点になります。
なぜ「溝を埋める」だけでは、しこりや不自然さにつながりやすいのか
ほうれい線が境界線である以上、溝そのものにヒアルロン酸を注入しても、境界を作っている靭帯や、その周囲の頬のボリューム低下という根本原因は変わりません。
さらに、ほうれい線の周辺は、話す・笑うといった表情の動きが大きい部位です。
動きの大きい部位に、溝を埋めるためのヒアルロン酸を直接注入すると、表情を動かした際に製剤の存在が皮膚表面に浮き出て見えたり、触れると硬さを感じたりすることがあります。
「しこりになった」「笑うとデコボコする」という失敗談の多くは、この「動きの大きい境界部分に、局所的に製剤を集中させてしまう」ことが背景にあります。
当院での治療設計:溝ではなく、頬を整える
境界線としてのほうれい線に対しては、溝そのものよりも、溝を作り出している要因(頬のボリューム低下)に働きかける方が、自然な仕上がりにつながりやすいとされています。
当院では、頬全体のボリューム補充にヒアルロン酸(アラガン社製剤:ボリューマ・ボラックスなど、頬の深部への注入に適した製剤)を使用し、溝そのものではなく頬骨側の支持を底上げする設計を基本としています。
溝の中に直接大量に注入するのではなく、頬全体への少量ずつの分散注入を組み合わせることで、表情を動かしたときの不自然な硬さやデコボコを避けやすくなります。
すでにヒアルロン酸のボリューム補充だけでは物足りない、皮膚のハリそのものが低下している場合には、リジュランやプルリアルのような肌育注射を併用し、皮膚の土台からの改善を図ることもあります。
頬のたるみが進行し、境界の落差が大きい場合には、ヒアルロン酸による補充だけでなく、糸リフトやサーマクールFLXのような引き締め治療を組み合わせ、頬の位置そのものを引き上げる設計を検討することもあります。
どの組み合わせが適しているかは、溝の深さ、頬のボリューム量、皮膚のハリの状態によって異なるため、診察で構造を確認したうえで、個別に設計します。
よくあるご質問
Q. 結局、ほうれい線治療は何から始めればいいですか。
A. 多くの場合、まずはヒアルロン酸による頬のボリューム補充から検討します。
皮膚のハリ不足が強い場合は肌育注射を、たるみが進行している場合は引き締め治療を組み合わせます。
診察で溝の深さと頬の状態を確認したうえで、優先順位を含めてご提案します。
Q. ほうれい線に直接ヒアルロン酸を注入するのは間違いですか。
A. 一概に間違いとは言えませんが、溝の深さや原因によっては、直接注入よりも周辺のボリューム補充を優先した方が、自然な仕上がりにつながることがあります。
実際の設計は、顔立ちや溝の深さによって個別に判断します。
Q. ヒアルロン酸を入れると、将来やめたときに余計に老けて見えませんか。
A. 頬全体のボリュームを補う設計の場合、ヒアルロン酸は徐々に体内で吸収されていくため、急激に元の状態に戻るというよりは、緩やかに変化していきます。
ただし、吸収のスピードには個人差があります。
Q. マッサージでほうれい線は薄くなりますか。
A. マッサージは血行促進やむくみ改善には役立ちますが、支持靭帯の状態や脂肪の量そのものを変えることは、物理的に困難です。
ほうれい線が構造的な境界線である以上、マッサージだけでの根本的な改善には限界があります。
Q. 若いうちからほうれい線がある場合も、同じ原因ですか。
A. 若年層のほうれい線は、骨格や表情の癖など、加齢とは異なる要因が関わっていることもあります。
原因によって適した対処法も変わるため、気になる場合は診察での相談をおすすめします。
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橋本 昭彦(はしもと あきひこ)
2013年鹿児島大学医学部卒業。医学博士。
大手美容外科、都内皮膚科・美容皮膚科・美容内科での勤務を経て、2025年CZEN CLINICグループ入職。
日本美容外科学会(JSAS)所属。